特許第5161898号「排気ガス流の加速装置」における自然法則の適用の誤り等


この出願書類には「第1加速部」、「第2加速部」といった記載がありますが、

(1)図面が精確であるならば、「第1加速部」におけるガス速度の増加はかなり小さいはずです。

(2)「第1加速部」と「第2加速部」との間は、「急拡大管」となって、ガス速度は大きく低下するはずです。

(3)「第2加速部」は、いわゆる「絞り」同様の形状ですが、流入ガスは上の理由で減速されており、また流入部が解放されているため、「絞り」ほどのガス速度上昇は実現されないはずです。

(4)「第2加速部」の後方で、相対的に速度の大きな中心部のガス流(速度v1)と、相対的に速度の小さなな周辺からのガス流(速度v)とが混合しますが、混合後の流速が、そのまま速度 v1 であるかのように記載されています。

(5)この出願においては、上述のように、局所的な物理現象に対して恣意的な解釈が行われているようであり、その結果、この出願をトータルで考えると、自然法則に反した内容となっていると考えられます。

(6)出願書類には、不明確な記載も多いようです。この出願の「発明者」による、他の出願を含めた特許出願の多くに、「負圧が発生する」旨の記載があります。「負圧」という言葉が用いられる場合、技術常識としては、いわゆる「ゲージ圧」による圧力値記載であると推測され、「負圧」は「(標準)大気圧よりも低い圧力」を意味します。それ以外の意味で「負圧」という言葉を用いる場合には用語の意味をきちんと定義しないといけないはずですが、どの出願においても、意味があいまいなまま「負圧」という用語が用いられています。


(参考)7年ほど前の記事ですが、ご参考まで。(次の二つのリンク先は同じ内容です。)

 http://www.h7.dion.ne.jp/~ebato/main/ebato/every_2010/201009_jvcs_jvts.htm

 http://ebatopat.web.fc2.com/main/ebato/every_2010/201009_jvcs_jvts.htm


 この出願の「発明者」は、個人としてはかなり多くの特許出願を行っており、そのいくつかは特許されています。しかし、誤って特許されたと思われるものが少なくありませんので、注意が必要と思われます。

最終更新日:2017年7月7日


(追記) これとは別に、同じ発明者の出願による同様な技術分野に関する特許として、現時点で有効に存続している特許第3295397号があります。特許性はともかくとしても、物理学・流体力学的には、さらに問題のある記載内容になっています。

追記:2017年7月9日